この春、初めて軽石に出会う人へ。本当の僕たちを知ってください。 #福徳岡ノ場 #福徳岡の場

はじめまして、僕が噂の軽石です。お見知りおきください。
今週のネコわくは、新しい学生がたくさんきてくれています。そんなメンバーの多くが、内地から沖縄に渡ってきた、沖縄に来て数日という学生たち。
一緒に海岸を散策しに行くと、であうのがあの軽石たち。
「はじめまして！」
僕たち、醜いものではありませんよ〜。怖いものでも、嫌なものでもないんです。
みんな知らないだけ、ちょっと誤解しているだけ。
実は、生き物と仲良しだったり、きれいな宝石が入っていたり、結構魅力的な石なんです。
人も石も最初の出会いが大切。
沖縄生活を始める人が多いこの時期。良い印象で軽石との出会いをできるひとが、たくさんいることを願っています😁

まずは軽石の漂着映像をご覧下さい。
２０２１年１０月２５日の沖縄本島北部です。



沖縄の海岸に落ちている灰色の軽石について。
これは、昨年10月に遠く離れた海底火山から流れてきたものです。沖縄から1300kmも離れた小笠原諸島の海底火山「福徳岡の場（ふくとくおかのば）」が、2021年8月に大きな噴火をし、そこから数万トンという大量の軽石が海へと流れ出しました。
それが2ヶ月ほどで沖縄まで流れ着き、奄美から沖縄の海岸で、たくさん打ち上がっています。
よく◆軽石は危険なので触らない方がいい◆生き物が死んでしまう◆軽石は生態系を壊してしまう◆沖縄の海岸を汚してしまう
など報道がされて、そうした悪いイメージを持たれている方が多いのですが、実はそれらのほとんどは、科学的な根拠のない誤解から生まれています。

正しくはこうです。
◆軽石は危険なので触らない方がいい→安全です。　軽石は地下のマグマが冷えて固まったものです。人体や動植物に危険性のある成分は含まれていません。一時期、成分が不明で、という報道がなされましたが、これは正しく火山学を理解できる人が少なかったためです。火山学者などの専門家からは、当初から危険性はないと言われていました。
◆生き物が死んでしまう→死にません。
　軽石の影響で死んでしまう生き物は、実際にはほとんど確認されていません。ウミガメが軽石を飲み込む事例はありますが、飲み込んだ軽石が死因となったという報告はありません。魚なども、囲われた養殖場内などの例外を除いて基本的には異物を飲み込むことはしません。海には軽石以外にも、プラスチックゴミや小石や木片なども流れています。そうしたものを飲み込むことは、少なからずありますが、実際にはそれらが原因で死に至る生き物は、ごく限られた事例になっています。
◆軽石は生態系を壊してしまう→逆です。
　サンゴ礁などへの影響を心配する声も当初はあがっていましたが、実際には軽石は漂流するものであり、長期間サンゴ礁のリーフ内に止まることはしませんでした。また沈みにくい性質から、浅いサンゴ礁や干潟へ沈んで堆積することもほとんどなく、畑などからの赤土流出の問題などに比べても、ごく限られた影響になっています。　逆に大量に漂着する軽石は、その地域の生態系を豊かにするとも言われています。実は、遠い海から軽石に乗ってたくさんの生き物が流れ着いてきます。軽石はまるで生き物たちのフェリーのようなもの。そして、海岸に流れ着いた軽石は、浜辺の生き物にとって格好の棲家になっています。スカスカで湿度もあって、太陽の光も遮ってくれて。　そうしたことを通して、実は、海岸の生態系に刺激を与え、ごくわずかですが新しい風を吹き込み、生態系全体としては底上げをしてくれる現象なのです。
◆沖縄の海岸を汚してしまう→自然のものはゴミではない
　そもそも、ゴミ問題や赤土問題（畑などから土砂が海に流入すること）などの人の活動による影響と違って、軽石の漂着は、火山活動という地球の営みの一つで、自然現象です。これは人類が誕生する以前から数億年、数十億年と地球上で繰り返されてきた現象です。　こうした現象によって、一時的にこれまでなかった石が、海岸に増えて見た目が変わることもあると思います。ただ、それは自然の営み一つ。そうした変化を通して、生態系は形づくられ、力強く変化していきます。それが自然の流れでもあります。
そう、実は自然への悪影響はないんです。　人の見た目に「きたない」「汚れている」と思ってしまうことが、自然にとって悪いこととは限らないのです。残念ながら今の日本人の多くが、こうした人間主観の自然観となってしまっていることが、この軽石問題から見えてきたとも言えます。


ただし、軽石漂着は、人間社会への影響は一部であります。
漂着量が多いエリアでは、船のエンジンが動かなくなり、港から漁船やフェリーが出港できなくなる影響。養殖場や海藻の収穫場所などでは、入り込んだ軽石によって魚や海藻の商品価値がなくなってしまう影響。白い砂浜をイメージしてPRしている海岸が、灰色になって観光業にとってのイメージダウンになる影響。
こうした影響により、仕事や生活に支障が出ている方もいるのも事実です。
　大切なのは、自然環境への影響と人間社会への影響をしっかりと、科学的に見極めること。ここまでの報道や多くの人の理解は、そのあたりがこんがらがり、人間生活へ悪影響を及ぼすから、自然環境へも悪いものだとしてしまっている傾向があります。
　海岸が汚れているかは、人間の価値観次第です。収穫した海藻に軽石が入っていると商品価値は無くなりますが、階層の生態系に影響が出ているわけではありません。
　そう、悪影響は、よく見てみると、人が自然を利用している場面でのことになります。自然をいただきながら、利用させてもらいながら生活を回しているのが我々。だからこそ、こうした現象を通して、人間本意にならず客観的に自然の移り変わりを捉え、適切な対策をしつつ過剰に怖がったり、嫌がったりすることがないようにしていくことが大切なのではないでしょうか。


　そして、軽石は石そのものを見ても面白い魅力があります。今回、福徳岡の場という火山から流れてきた灰色の軽石は、よく見てみると灰色から茶色、黒、マーブル模様、金属質の光沢があるものなど、さまざまな色や形状があります。　また、沖縄の陸地ではみることがなかなかない鉱物や宝石を豊富に含んでいます。よく見てみると、キラキラする白い結晶や黄緑色の宝石が入っているのを見つけられます。
　これらは、火山の地下深くにあるマグマに由来するもの。地球のダイナミックな営みを手に取ってみることができる貴重な石でもあるのです。
　今は、無尽蔵というほどに沖縄の海岸に転がっていますが、こうした大量の漂着は、火山学的にはひとつの地域で100年に一度ほどの現象。地球の営みの時間軸では、よく起きることですが、人間の時間軸では、一生に一度経験できるだけでも奇跡的なものです。
　あと数年もすれば、探すのが大変になるほど少なくなっていくことでしょう。
　そうした、奇跡的なタイミングで、沖縄にいること。海岸で軽石に触れられることをぜひ、楽しんでもらえたらと思います。
　軽石は邪魔者じゃない。魅力的な存在なのです。
（ゆうにー）


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